幕が上がった瞬間、目に映る華やかな舞台の「装置、大道具」。清らかで美しい宝塚歌劇ならではのステージに華を添える仕事です。設計図を基に金槌や鋸を使用し作り上げる大道具は舞台機構との融合により立体感溢れる舞台のセットへと変貌を遂げます。常に安全を第一に考え、お客様に喜びと感動をお届けする舞台作りを目指し日々邁進しています。
秒単位のスピーディーでダイナミックな舞台転換は、宝塚歌劇の魅力のひとつ。そのシンボルでもある大階段(26段)と、大小8つの迫(セリ、昇降装置)、盆(廻り舞台、直径14.6メートル)、吊り物(32本のバトン)等舞台機構のコンピューター制御と、人の手によって操るパネルや立体大道具、各種仕掛け等アナログ転換との融合により、出演者と息を合わせた華麗な舞台を日々つくりあげています。
芝居とショー異なる舞台セットの色彩と形を司るのが「背景」。舞台装置家の描くデザイン画を基に、背景画やスチロールを使った立体彫刻等を製作します。受け継がれてきた伝統的な技法から、より進化した新しい表現まで、様々なテクニックを駆使して作品の世界に彩りと説得力をあたえます。
舞台を華やかに彩る様々な布地素材の縫製を手掛けるのが「舞台幕」。例えば舞台間口いっぱいに描かれる背景幕(ドロップ)や宝塚を語るうえで欠かせない全幅18mものダイナミックな全面ドレープカーテン等も全て手作業で縫い合わせています。また、ドレープのひだ取りや輪郭は照明に照らされた時の煌びやかさ、他のセットとのバランスなど細部までイメージし計算しながら縫製しています。
芝居やショーの演出に欠かせないのが「小道具」。これらのデザインを含め、毎公演専属のスタッフが製作しています。小道具には大きく分けると出演者が持って使う「持ち道具」と机や椅子等の「置き道具」があり、演出家との打ち合わせの元デザインを決め、女性が使用することから軽量化を図ったり、長期の公演にも耐えることの出来る道具を製作しています。
又、舞台のオペレーションも専属のスタッフが担当し、場面転換や出演者への道具の受け渡し、道具の点検・修理等、日々安全・正確に公演が行われるよう努めています。
宝塚歌劇の大きな魅力のひとつが豪華絢爛な「衣裳」。帽子・靴・かつら・羽根飾りにいたるまでの製作、本番中の着付けを専属スタッフが担っています。多彩な作品の世界観、一人ひとりのシルエット、ダンスをする際の動きやすさ等々、様々なことを考慮して舞台衣裳を手がけつつ、宝塚歌劇の特徴でもある本番中のスピーディーな衣裳の早替りを熟練の技術で支えています。
最先端の設備を駆使した美しい照明で、舞台を盛り上げるのが「照明・電飾」。プロジェクターの導入により映像効果が充実。躍動的な動きを表現するムービングライト、スターを照らし出すピンスポット、セットに取り付けた電飾。これらの照明・電飾は、スポットライト以外はすべてコンピュータで制御され、ボタン一つで操作できるようになっています。9台あるピンスポットは手動で、一人で2~3台を同時に操作することもできる、まさに総合芸術の一翼を担う仕事です。
最新の機器を使用し、臨場感溢れる舞台に欠かせないのが「音響」。劇場1階客席奥のミキサー室からマイクやスピーカーを管理、操作を行います。マイクの調子が悪いときは、壁面に設置された超小型カメラとインターホンを通じて対話できるようになっており、素早く対処できる仕組みになっています。雨、風、嵐といった効果音の製作や操作も音響の担当。高度な技術で的確に操作を行い、舞台を盛り上げています。劇場スピーカーの台数も200台弱あり、効果音の音像移動が出来る機材を搭載、演目のクオリティに繋げています。
タカラヅカの特徴である“いつの間に変わったのだろう?”と思わせる素早い舞台転換。緞帳が上がってから下りるまで、公演本番を着実に進行させるのが「舞台進行」。ひとつの公演に40~50シーンある転換で、円滑に吊り物や舞台機構が動作するよう、慎重に全体を把握します。また、舞台の窓口となり劇団との調整ごとや舞台稽古の仕切り、本番での転換のキッカケ出し、出演者のケアにいたる一連の公演業務を担っています。