











Chapter 01
もっと他の世界を見てみたい
「小さい頃から根っからの野球少年。実は、高校3年生の時には球団テストを受けるかという話もあったんですよ。結局テストは受けなかったんですけどね」。そう笑いながら話すのは大道具係の遠藤さん。今でも野球は観るのもやるのも大好きで、社内の野球好きとチームを組んで活動しているといいます。そんな遠藤さんが、演劇の世界に入ったのは20歳のとき。「野球と同じくらい映画もずっと好きで、放送芸術科のある学校に通っていたんです。ゼミでは演劇・ミュージカルを専攻して、いつかは日本映画の現場で働きたいと夢見ていました」と遠藤さん。しかし、当時は日本映画大低迷期。映画関連の採用はほとんどなく、卒業後は渋谷の音楽ホールに就職し、小屋付きのスタッフをしていたといいます。「公演演目はクラシックやバレエ、オペラがメインでした。そして入社して数年後だったかな、珍しく歌舞伎の公演があったんですよ。ただ、その舞台が今まで出会ったことのない素晴らしい演出で…衝撃を受けました。舞台にハマったのはそのときですね。 それをきっかけに“もっと他の世界を見てみたい”と思うように。僕の大道具の師匠でもあるホールの棟梁に相談したところ、宝塚での舞台仕事を紹介してくれたんです。」
Chapter 02
演劇の世界に入って約30年
宝塚に入社してすぐ、遠藤さんが抜擢されたのは、『TAKARAZUKA1000days劇場(旧・東京宝塚劇場の建て替え期間中の仮設劇場)』の立ちあげメンバー。「宝塚歌劇について全く知らなかったので、最初お話をいただいたときには驚きました(笑)。紹介してくれた棟梁からも“やるなら、これまで学んだ大道具の知識を一回リセットしないといけない。それくらい、宝塚歌劇は独自の文化と歴史がある”と言われました」と遠藤さん。今まで積み上げてきたことがリセットされることに不安はなかったのだろうか…。「不思議と不安は感じなかったですね。ずっと舞台の裏方をやってきたという自信もあったし、会社が違えば文化もルールも違うのは当たり前だから」と笑います。舞台の世界に入って30年、宝塚歌劇以外の大道具も経験してきた遠藤さんだからこそ感じる、宝塚舞台の特徴について聞いてみると、「間違いなく舞台転換の速さと多さですね。30秒から1分間の限られた時間のなかで、世界観を壊すことなくスピーディに転換するのは宝塚歌劇ならでは。しかも短いときは数分おきに転換しますからね」と話す遠藤さんの横顔はなんだか得意げだ。
Chapter 03
みんなの仕事がバシッとハマる瞬間
「進行係が安全確認をしてきっかけを出し、音響係のSEとともに照明係が暗転。大道具係と小道具係がスピーディに舞台を転換する間に、出演者の早着替えを衣裳係がサポートする。そして数秒後の明転とともに次のシーンがはじまって…。みんなの仕事がバシッときれいに決まったときの達成感は、他には替えられません」と遠藤さん。「次の舞台が始まる前の数日間、舞台稽古以外の時間も練習を繰り返すみんなの姿を見ているので、感動もひとしおです」と続けます。そんな遠藤さんに今後の目標を尋ねると、「さらなる働き方改革ですね。昔に比べると格段に改善はしているのですが、人員不足もあって公演の入れ替え日だけはどうしても深夜作業になってしまうんです。そこを仕組みから改善していきたいなって」と遠藤さん。労使委員会の代表委員も担い、どうすればもっと働きやすい環境をつくれるか話し合っているといいます。「やりがいのある仕事でも身体的にしんどいと続けられない。若い人たちにもっとこの仕事の楽しさを知ってほしいからね」。舞台歴30年のベテランは、業界の未来を見据えていた。
time schedule
タイム
スケジュール
<平日1回公演の場合>
-
12:00
出勤・メールチェック
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12:30
舞台機構点検
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13:05
全体ミーティング
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13:30
開演 公演業務
-
15:00
第1幕終演後、第2幕に向けてセットチェンジ
-
15:30
開演 公演業務
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16:30
終演後、片付け
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17:00
退勤
※平日2回公演の場合は、休憩をはさみ18:00公演、21:30退勤
<土日2回公演の場合>
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09:30
出勤・メールチェック
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10:00
舞台機構点検
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10:35
全体ミーティング
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11:00
開演 公演業務
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12:30
第1幕終演後、第2幕に向けてセットチェンジ
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13:00
開演 公演業務
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14:00
終演後、次の公演準備、適宜休憩
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15:30
開演 公演業務
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17:00
第1幕終演後、第2幕に向けてセットチェンジ
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17:30
開演 公演業務
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18:30
終演後、片付け
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19:00
退勤
meaasege
求職中の方に
メッセージ
東京宝塚劇場は1ヶ月半に1回ある公演の入れ替え日は大変ですが、半日公演の日などもあって比較的落ち着いています。仕事終わりにみんなで飲みに行ったりすることもあります。私の所属している野球部も、新入部員を募集中です。他の劇場の野球部との練習試合も定期的に行っていますよ。