阪田 健嗣

緞帳が上がってから
降りるまで
ミスなくできるのが
当たり前

#10

劇場部 宝塚公演課
進行係阪田 健嗣

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Chapter 01

映像の世界から、舞台の世界へ

「学生の頃は映画やテレビなど、映像の仕事を志していました」。そう話すのは2009年入社の阪田さん。公演中の出演者の誘導や、舞台転換の確認、舞台上の安全を守る進行係に所属している。 学生時代はCG制作の学科を専攻。「自分で台本を書いて短編映画を撮ったり、3DでCGアニメーションをつくったりしていました。そんな制作活動を約6年続けるうちに、学生時代に映像でやりたいことがほぼできたと、映像の世界に区切りがついたんです」と当時を振り返ります。映像の世界から、舞台の世界へ。畑違いの世界に飛び込むのは怖くなかったのだろうか。 「芸術系の学校だったので、舞台に関わる学科の人たちとの交流もあって、舞台の世界が遠くなかったんですよね。あと、これまで学んできたことが少しでも活かせるのでは…と思って。でも今思い返すと、あまり詳しく調べもしなかったから、軽い気持ちで飛び込めたのかも(笑)」と笑います。

Chapter 02

舞台に“絶対”はない

入社してすぐの進行係は、舞台袖で出演者の誘導を行ったり、道具の出入りや装置を動かすにあたって安全確認をしたりする“フロア”と呼ばれるポジションに就く。そこで数年経験を重ねた後、各係に転換のキュー(キッカケ)を出すポジションへとステップアップするという。指定の位置に出演者が立っているか、転換で動く装置の上に予定していない人・物が乗っていないか。吊り物が降りてくる下に人がいないか。出演者がはける舞台袖に道具が出ていないか…。キュー出しをするまでの数秒間に確認するポイントはいくつもある。 「緞帳が上がってから降りるまで、安全に進行することが僕たちの仕事です。ただ、出演者の立ち位置や袖へはける動線、道具の動かし方などが、シーンごとに事細かく決まっていても、舞台は生物。そして出演者も人、道具を動かすのも人なので、“絶対”はないと思って確認しています」と阪田さん。舞台転換では数メートルの大きさのパネルや自分の身長を超える道具が動き、セリが下がると数メートルの深さにもなるため、小さなミスが大きな怪我や事故につながることも。客席から見ると華やかな舞台も、裏は常に危険と隣り合わせ。阪田さんたち進行係が厳しく目を光らせてキューを出しているからこそ、出演者もスタッフも安心して自分たちの仕事ができるのだろう。

Chapter 03

ミスにつながる危険な芽を一つずつ潰す

「公演中の安全確認ももちろん大切ですが、より重要なのが進行台本の時点で危険な芽をできるだけ潰しておくことです」と阪田さん。進行は公演作品ごとに“担当者”を1名決め、そのスタッフが劇団の稽古場にも参加して、演出プランの調整や舞台稽古の仕切りを担当。舞台機構や大道具の動き、出演者の立ち位置や動きを確認し、理想の演出の中で危ないポイントがないか確認しているといいます。 「演出家が頭に描いている理想を、どう安全に舞台に落とし込むか。頭の中で展開図を描きながら、ありとあらゆるケースを想像し、ミスにつながるかもしれない芽を潰すのも僕たちの役割です。大道具や小道具、衣裳、照明、音響など、他の係と連携しながら、理想のカタチになるべく近づけながらも、“安全に進行できるカタチ”を見つけなくてはいけない…。初めて担当になった頃は気苦労が多かったです(笑)」と阪田さん。 「初日の幕が上がって、何事もなく幕が降りて、お客様の拍手が聞こえるとホッとします。この前担当した作品では、演出家から『阪田さんのおかげですごく良い舞台になりました』と言って頂けて。ちゃんと期待に沿う仕事ができた…と嬉しかったです。進行係はミスなく安全に進行するのが当たり前なので、褒められる機会ってあまりないんです(笑)」。 緞帳が上がって降りるまで、ミスなく安全に…。厳しいようだが、阪田さんたちにとってはそれが当たり前。宝塚の華やかな世界は、進行係の厳しい目で今日も守られている。

time schedule

タイム
スケジュール

<2回公演の場合>

  • 09:30

    出勤・全体ミーティング
    舞台機構点検

  • 10:00

    係でミーティング

  • 10:30

    舞台清掃・開場前確認・タイムコール(15分前、10分前、5分前)

  • 11:00

    開演 公演業務

  • 12:30

    第1幕終演後、第2幕に向けてセットチェンジ・舞台清掃、昼休憩

  • 12:50

    タイムコール

  • 13:00

    開演 公演業務

  • 14:00

    終演後、次の公演準備・舞台清掃 適宜休憩

  • 15:20

    タイムコール

  • 15:30

    開演 公演業務

  • 17:00

    第1幕終演後、第2幕に向けてセットチェンジ・舞台清掃、適宜休憩

  • 17:20

    タイムコール

  • 17:30

    開演 公演業務

  • 18:30

    終演後、片付け

  • 19:00

    退勤

  • ※タイムコールは日替わりで担当

meaasege

求職中の方に
メッセージ

厳しく聞こえるかもしれませんが、進行係は判断を一歩間違えれば、誰かを傷つけたり、傷つけさせたりすることもある仕事です。そして、“生の舞台を動かすことができる”、とてもやりがいのある仕事でもあります。進行担当になると、劇団とはもちろん大道具や小道具など、他の係と関わることも多く、みんなで一つの舞台をつくりあげていく達成感をより感じることができます。舞台運営に興味のある方は、ぜひ宝塚舞台の扉を叩いてください。

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