











Chapter 01
1年目は
釘もきれいに
打てなかった
「学生時代は機械をつかった金属加工を専攻していたので、木材を扱うことがほとんどなく、入社してすぐは木をまっすぐ切ることも、釘をきれいに打つことも難しくて苦労しました。」そう笑いながら話してくれたのは、2019年入社の本田真生人さん。舞台の基礎をつくる劇場部 舞台製作課(大道具製作)の若手社員だ。装置係は作品の世界を演出するうえで重要な役割を担う舞台セットの骨組みやパネルを製作する、言わば大工さん。舞台装置家からのデザインを元に、最初にカタチをつくっていく部門だ。一つの舞台で使用するパネル(天井から吊る・舞台に立てる)や引き枠(底にキャスターがついていて人が押して動かす道具)の数はなんと40以上!人力で動かしたり、天井に吊り上げたりするため、使用する素材は金属ではなく軽い木材や布物がほとんどだという。「実は木材加工については入社してから教えてもらいました。先輩方も“1年目ができないのは当たり前だから、安心して”と、一つひとつ丁寧に教えてくれて。早く一人前になりたいと必死でした」と当時を振り返る。金属から木材へ…。畑違いの装置係に飛び込んだのは何故だったのだろう。
Chapter 02
夢の世界を
つくる仕事
「学生時代はやりたいことがまだ曖昧でした。ただ、同じものをずっとつくる工場の仕事はしたくないな…と漠然と思っていて。そんななか、学校に届いていた多数の求人のなかで、たまたま宝塚舞台の求人に目が止まったんです」と本田さん。元々いろんな舞台を観に行っていたことから、宝塚舞台の仕事について興味をもつようになったといいます。「公演ごとに違うものをつくれるっていいな、って純粋に思いました。就職活動中に職場見学にも参加し、『エリザベート』で使用する道具を間近でみせていただきました。実は以前、同作品のDVDを観ていたこともあり、あの夢の世界はこうやってつくられているんだ…と感動したのを覚えています」と話します。夢の世界をつくる。この感動は、入社後もさらに続きます。「宝塚は全部“人の手”でつくってるんですよ。例えばパネルをつくる際、一枚の大きな木の板にまず背景係が手書きで縁取りを描いてくれるんです。それを僕たち装置係が切り抜いて、天井に吊り上げたり、電飾をつけられるように一つひとつ補強する。その後、背景係がそれに筆で彩色して、電飾係が手作業で電飾をつける…。入社前はここまで人の手でつくっているなんて想像ができていませんでした」と本田さん。元は一枚の板や一本角材が、様々な人の手を通って一つの道具になり、それらを公演大道具が人の力で動かす。音響や照明、衣裳、小道具、舞台進行、たくさんの人が、人の手が、舞台を支えていることを実感したといいます。
「僕たち装置係が最初にカタチをつくり、色んな係の手を通って最後にお客様の目に映るんです。手を抜いたものはお客様の心に響かないですから。お客様の心に響くような綺麗なものをつくりたい」と話します。
Chapter 03
横をつなぐ
人材になりたい
「大工仕事って職人気質で先輩たちも怖いんじゃないか…と思うかもしれませんが、そんなことはありません。僕も入社当時は木材加工については全くの素人でしたが、先輩方も“1年目ができないのは当たり前”と言ってくれて。ただ、やっぱり最初の1年、慣れるまでは苦労しました」と笑います。製作系の係が必ず近くに置いて都度確認している「道具帳」と呼ばれる40分の1サイズのデザイン見本には、表側のデザインは描いてあるが、実は裏側については記載がない。できあがりをイメージしながら、この後電飾係がどのようにLEDを這わしていくのか、劇場に吊り上げた時の強度や重さは大丈夫か、東京宝塚劇場に運ぶ際にはどう分解するか…その後のことも考えながら、その場で木材のサイズを合わせて、どんどん組み上げていく様子は圧巻だ。「装置係だけでは舞台はつくれないんです。係や課を越えてたくさんの人たちの力が合わさって、夢の舞台がつくられていく。だからこそ、係や課や年齢関係なく横同士で深く繋がって会社を盛り上げていけるような、横をつないでいける人材になりたい」と話します。本田さんは2019年入社。装置係では若手を引っ張るルーキー的な存在だ。最近は装置係として初めて女性社員の入社もあり、会社全体としても新しい風が吹いている。夢の世界を、人の手で、みんなでつくりあげる。トントントン、カンカン!夢の世界をつくる音が、今日も作業場に響いている。
time schedule
タイム
スケジュール
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09:30
出勤
部門ミーティングで1日の流れを
確認・掃除など -
09:40
作業開始
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12:00
昼休憩
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13:00
作業再開
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15:00
適宜休憩
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18:10
片付け・機械停止・戸締り
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18:30
退勤
meaasege
求職中の方に
メッセージ
1年目ができないのは当たり前。僕みたいに木材加工が未経験の人でも、一からきちんと教えてくれます。経験よりも「何事も挑戦する気持ち」が大切です。また、僕たちは初日前日の「通し舞台稽古」で舞台の完成系をチェックするのですが、その美しさに毎回感動しています。やはりお客様にご観劇いただいて舞台は完成する!夢の舞台をイチからつくることができる、とてもやりがいのある仕事です。